名刺
世の中には知らない方がいいこともあるっていうのはどうやら本当のようで、子どもの頃はどうでもよかった考えにもあがらなかったようなことが歳を重ねるにつれて自分を悩ませて生き辛くしてしまうことが往々にしてあります。
子供の頃、8歳くらいまでですかね、悩みはあったのかもしれないけれど朝起きて学校行って放課後は遊んだり習い事行ったりして帰って今日何があったかを家族に話してテレビを見てまた朝が来て、その時間をそれなりに生きていました。
けれどいろんなところで人と差が生まれ始めて、足が速い子、話がおもしろい子、、、ってみんながお互いに共通の認識を持ったラベル付けをするようになっていきました。
人より優れていると自認できることはさながら”名刺”のようですね。自分を自分をたらしめるもの、アイデンティティだと思います。
でも、僕にはそれがなかった。そして今もない。足が速くない、話が面白くない、楽器が弾けるわけでもない、勉強ができるわけでもない、何かを作れるわけでもない、、、
自分が何者なのかわからなくなることがときたまあります。何かに突出している人は何かしらの欠陥を持っているというけれどそれでも僕は何か欲しかった。何も持っていなければ何が欠陥なんてわかりません。
”名刺”なんてなんでもよかったんです。歌がうまいとか絵がうまいとか腹踊りがうまいとかでもよかったんです。これが自分だと思えるものがあれば。
今はそれを探すためにいろんな初めてに手を出し始めています。全部初めてなので何もわからなくて全部ポイっってしたくなります。でも自分が何者だって言えるようになれるなら、欠陥を抱えようがちゃんと生きていける気がします。